日ごろから色々なことでストレスを抱えている人は多いと思います。ストレスを感じていると夜中に目が覚めるといったことや寝付けないといったことが多くなります。
ストレスは実際にどのように脳の働きに影響するのでしょうか?なぜストレスを感じていると寝つきが悪くなる、夜中に目が覚めるといったことが起こるのでしょうか?
生理的な視点からストレスが脳の働きに与える影響を調べてみました。
ストレスとコルチゾール
人間は本能的にストレスを感じると戦うか逃げるかという状態になります。野生動物は敵に襲われると逃げるか戦うかということになりますが、この人間のストレスに対する反応は人間が野生動物として持っている遺伝子レベルの性質です。
コルチゾールはストレスホルモンとも呼ばれ、体の機能を調整する役割を持っています。特にストレスに対する体の反応を調整するために重要なホルモンです。
具体的には、
ストレスに対処のための体力を確保するために、血糖値を上昇させエネルギーを供給するという役割を持っています。
ストレスによる過剰な免疫反応を防ぐために、免疫反応を抑制し炎症を抑えるという機能もあります。
また、心拍数や血圧を上昇させ、体がすぐに反応できるような状態にします。
といった働きがあります。コルチゾールによりこのような反応により人間は戦うか逃げるかという状態になります。
ストレスがかかると、HPA軸と言われている視床下部、下垂体。副腎が活性化されることによりコルチゾールなどのストレスホルモンが分泌されます。ストレスを感じると視床下部、下垂体、副腎はそれぞれ順に連動して反応します。
視床下部は脳の一部になりますが、まずはここでストレスが感知されます。視床下部がストレスを感知するとCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)を分泌します。CRHは下垂体に信号を送り、CRHの信号を受け取った下垂体はACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を分泌します。ACTHは血流を通じて副腎に到達し、副腎はACTHの刺激を受けて、コルチゾールを分泌します。これがストレスを感じた時にコルチゾールが分泌されるときの体の中で生理的に起こっている反応です。
このようなHPA軸の働きは慢性的なストレス状態になると常に働くことになり過剰な活性化した状態になり、コルチゾールの分泌が持続的に高まり、慢性的なストレス状態が続きます。これにより、免疫機能の低下や高血圧、糖尿病などを引き起こす可能性が高まります。また、HPA軸の異常は、過剰なコルチゾールは脳の海馬にダメージを与えうつ病や不安障害の原因の一つになっています。さらに記憶や感情の調整に悪影響を及ぼしているといわれています。これらは睡眠の質にも大きな影響を与え、寝つきが悪い、夜中に目が覚めるといった症状につながり睡眠の質低下させることが知られています。
自律神経系への影響
ストレスはHPA軸に影響を与えるだけではなく自律神経系にも作用します。特に、交感神経が優位になった状態では心拍数や血圧が上昇し緊張した状態になります。このような状態が続くと、寝つきが悪くなったり夜中に目が覚めるなどの睡眠の質が下がったりします。
自律神経系は体の基本的な機能を無意識に調整するという重要な役割をしています。
自律神経系は、交感神経と副交感神経の二つに分けられます。
交感神経は、ストレスや緊張時に活性化され、心拍数や血圧が上昇し、体が先ほどの戦うか逃げるかの状態になります。瞳孔は拡大し、気管支が拡張し、消化活動が抑制されるといった反応がでます。
一方、副交感神経は、リラックス時や休息時に活性化され、心拍数や血圧が低下し、体が休息と回復の状態になります。消化活動が促進され、瞳孔が収縮し、気管支が収縮します。
これらの交感神経と副交感神経がうまく調和しながら機能することで、体はバランスがとれた状態で機能しています。しかしながら、ストレスや不規則な生活習慣などが原因でこのバランスが崩れるといろいろな不具合が出てきます。
まずは、睡眠の質が下がり疲労が抜けないといったことが挙げられます。交感神経が過剰に働くと、夜間にリラックスできず、寝つきが悪くなる、眠りが浅くなり夜中に目が覚めるといったことが起こります。
また、副交感神経の働きが低下すると、消化器系の問題も多くなります。消化不良や便秘、下痢などの問題を引き起こします。消化不良等です夜中に胃がもたれたりといたことも多くなり睡眠の質を下げる原因になります。
さらに、交感神経が過剰に働くことにより、心拍数や血圧が常に高いくなり心血管系の負担が増加するといった悪影響も出てきます。
このように自律神経系が乱れると身体に多くの悪影響を与え、睡眠の質を下げます。良い睡眠のためには自立神経系のバランスを整えることが重要です。
自立神経のバランスを整えるためには以下のような方法があります。
- 毎日同じ時間に寝起きし、バランスの取れた食事を摂るといった規則正しい生活を送る。
- 適度な運動により、副交感神経の働きを促進しリラックスする。
- 瞑想、深呼吸やヨガなどのリラックス法を取り入れ、交感神経の過剰な働きを抑える。
- ストレスを適切に管理することが、自律神経系のバランスを保つために重要です。趣味や友人との会話などリラックスする時間を持つといったストレスマネジメントにより自立神経系のバランスを保つ。
このような方法により自律神経系のバランスを整えることで、全体的状態を健康に保つことができます。
脳機能への影響
ストレスは前頭前野、海馬、扁桃体といった脳の機能にも影響を与えていると言われています。
前頭前野への影響
前頭前野は、計画を立てたりといった意思決定をしたり、感情を制御したりといった比較的高次機能を担っています。ストレスがかかると前頭前野の活動が低下し、冷静な判断が難しくなり衝動的な行動を取ることや、怒りや不安などの感情が抑えられなることが起こります。ストレスは前頭前野の活動を低下させ、判断力が鈍くなる、感情のコントロールができなくなり冷静さを失うといった影響を与えます。
海馬への影響
海馬は、記憶の形成と空間認識に重要な役割を果たしています。慢性的なストレスを感じることにより海馬の神経細胞は損傷を受け、新しい情報を覚えることが難しくなり、記憶も曖昧になる忘れものをするといった記憶力が低下する、方向感覚が鈍くなるといった空間認識力が低くなるということが起きます。
扁桃体への影響
扁桃体は恐怖や不安などの感情の処理をしています。ストレスにより扁桃体が過剰に活性化すると、小さなストレスに過剰に反応する、常に不安感が増すということが起きます。
このようにストレスは前頭前野、海馬や扁桃体といった判断したり感情をコントロールしたり記憶の管理をしたりという非常に高次元の役割を担っている脳の部位に大きな影響を与えます。
まとめ
ストレスを適切に管理することで脳の健康を保つために非常に重要です。リラクゼーション法や適度な運動などでストレスをコントロールすることによりストレスの影響を軽減し十分な睡眠を確保することが大切です。
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